人権配慮の方針は本当に履行されているのか? 海外4つの人権侵害を伴う事例への金融機関の関与を調査

08 12月 2014

日本の環境・人権NGOが問題を指摘している4つの開発プロジェクトを対象として調査を実施した。案件名、国名、プロジェクトに出資している日本企業は以下の通り。

  • ケース1:バタン石炭火力発電事業(インドネシア):電源開発、伊藤忠商事
  • ケース2:ボガブライ石炭採掘事業(オーストラリア):出光興産
  • ケース3:コーラル・ベイ・ニッケル製錬事業(フィリピン):住友金属鉱山、三井物産、双日
  • ケース4:ティラワ特別経済区(SEZ)開発事業(ビルマ/ミャンマー):三菱商事、住友商事、丸紅

  4つの開発プロジェクトに出資している日本企業9社に対する三菱UFJフィナンシャルグループ(三菱UFJ)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友)、りそなホールディングス(りそな)、三井住友トラストホールディングス(三井住友トラスト)の投融資状況を調査したところ、投融資の総計で5行から7兆円のお金が流れていることが判明した。

単位:億円

 

三菱UFJ

みずほ

三井住友

りそな

三井住友
トラスト

合計

融資

23,486.62

19,847.97

11,948.74

76.05

4,451.15

59,810.53

証券発行

2,848.70

2,377.99

1,600.67

0.00

0.00

6,827.36

株式保有

2,844.82

1,945.79

1,068.23

9.29

5,206.18

11,074.31

債券保有

25.00

26.55

31.10

0.00

32.98

115.63

 

特に各金融機関で掲げられた投融資方針とのギャップについては、三菱UFJ、みずほ、三井住友は、先住民族の「自由で事前の情報が十分に提供された上での合意(FPIC)」に基づく土地・資源利用について、適切に実施されていなかった。りそなは、公開されている情報の中には、加点対象となる方針はなく、掲げられた投融資方針とのギャップはなかった。三井住友トラストは、世界人権宣言や国連グローバル・コンパクトの人権規範の確保について、適切に実施されてないことが明らかとなった。各金融機関は、人権配慮に関する投融資方針の策定・強化、人権配慮確認(人権デュー・デリジェンス)の強化、エンゲージメント・投融資引上げ等を図るべきである。

詳しく知りたい方はレポートをダウンロードしてご覧ください。

PDFダウンロード:Fair Finance Guide第1回ケース調査報告書 日本の金融機関は人権侵害にどう関与しているか?~海外における4つの開発プロジェクトを例に(PDF)

※2014年12月9日に発表した報告書<第一版>は三井住友トラスト・ホールディングスの投融資額に一部間違いがあったため、それらの点を修正し、2015年1月9日に<第二版>を公開しました。