ラオスで大規模決壊事故を起こしたダム事業に三菱UFJ傘下の銀行が融資 ~海外銀行買収で日本のメガバンクが果たすべき責任は何か?~

近年、日本のメガバンクによる海外銀行の買収等が増加している。しかし、買収先の海外銀行が融資する開発事業における人権問題に対して、親会社である日本のメガバンクがどのように監督し、責任を負うべきかは必ずしも明確になっていない。そこで、本ケース調査では、三菱UFJ銀行の子会社であるアユタヤ銀行が融資するラオスのセピヤン・セナムノイ水力発電ダムのサドル・ダム崩壊事故を事例として、三菱UFJ銀行が果たすべき役割・責任について明らかにした。また、同様に海外銀行の買収を拡大している他のメガバンクに対しても、このような人権問題を予防する枠組みの強化を提言する。

2018年7月に発生した、ラオス南部に建設中のセピヤン・セナムノイ水力発電ダムの崩壊事故は、少なくとも48人の死亡者、23人の行方不明者、7,000人以上の避難者という大きな被害を下流の村々に与えた。また、水が流れ込んだセコン川の下流に位置するカンボジアでも25,000人が避難を余儀なくされた。事故発生時からもうすぐ1年になる今も、人々の避難生活は続き、事故によって失われた生活への補償は十分になされていない。

三菱UFJ銀行は、連結子会社であるアユタヤ銀行による融資を通じてこの事業に関与している。三菱UFJ銀行は、まずは被害を受けた住民らとの個別のダイアログを通じ今回の事故に対する救済に取り組み、同時に人権デューデリジェンスの実効性を向上させることが必要である。

三菱UFJ銀行に限らず、日系の金融機関が特に新興国の金融機関を買収あるいは出資等によりその事業に関与する例は下記の通り増えており、海外での事業活動の範囲は拡大している。これは、今回の事故で三菱UFJ銀行が負うのと同様の責任が他行にも生じることを意味する。したがって業務拡大に際しては、提携先の金融機関が関わっている事業が人権に与えうる負の影響を予防・軽減する措置、そして人権侵害が生じた際の救済が実現される仕組みを主体的に構築することが金融機関の果たす責任として強く求められる。

 

PDFダウンロード:Fair Finance Guide第10回ケース調査報告書 ラオスのダム決壊と日本の民間銀行の責任~邦銀の海外銀行買収における人権デューデリジェンスの重要性~