インドネシア石炭火力発電所の早期停止に向けた国際資金メカニズムの不透明で不公正な実態が明らかに

11 9月 2024

2024年9月11日、日本のNGO4団体で構成されるFair Finance Guide Japan(※1)は、ブリーフィングペーパー「アジア開発銀行(ADB)のエネルギー移行メカニズム(ETM)における不透明な意思決定プロセスと不十分な環境監査〜遠のくインドネシア・チレボン石炭火力発電所1号機の適切な早期廃止〜」を発表した(※2)。本調査の結果、ADBのETMでは影響を受けている住民や市民社会の声が適切に反映されておらず、ADBの環境監査では国際基準を遵守していない実態を適切に把握できていない項目や適切な是正措置が策定されていない項目が多数あることが明らかとなった。私たちはADBに対して影響を受けている住民や市民社会の意味ある参画を確保した上で、枠組策定と環境監査をやり直すよう求めている。

パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、特にアジア地域の石炭火力発電所の運転を早期にフェーズアウトすることが不可欠である。運転期間の短縮を金融面で支援するために、日本が最大出資国であるADBにおいて設立された国際資金メカニズムがETMであり、その第1号案件として丸紅等が出資するインドネシアのチレボン石炭火力発電所1号機がパイロット事業に選定された。2022年11月にADBと事業関係者間で覚書(MoU)が締結されて以降、1年と9ヶ月以上が経過した。その間、住民や市民社会の意味ある参加の機会が一切設けられなかった状況を受け、現在進められているメカニズム及びそのプロセスを拒否する姿勢を見せる現地住民組織・NGOも出てきている。

また、ADBが実施した環境監査では、生計手段への影響や補償・生計回復措置、地域社会の衛生・安全・保安、土地取得と非自発的移転、生物多様性の保全および自然生物資源の持続的利用の管理等に関する国際基準について、その遵守状況の分析が不十分ないし不適切であると思われるものが20項目に達した。そのうち、遵守状況の適切な分析ができていないため遵守状況が不十分である実態があるにもかかわらず、是正措置が策定されていない項目が16項目にのぼった。

Fair Finance Guide Japanでは、ADBに対してチレボン1号機の建設・稼働による影響を受けてきた住民及び市民社会を含む、幅広いステークホルダーによる意味ある参加を確保すること、環境監査についてインドネシア語版を作成・公開し、影響を受けてきた住民及び市民社会の早期の意味ある参加を確保した上で、やり直すことを求めている。



※1:世界15カ国以上で展開するFair Finance Internationalの日本コアリションで、日本では、アジア太平洋資料センター(PARC)、APLA、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)の4団体で構成。

※2:波多江秀枝氏(国際環境NGO FoE Japan)が執筆を担当。

 

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/本川絢子tanabe@jacses.org / honkawa@jacses.org