パプアニューギニアで進むESG規範違反のLNG事業

16 7月 2024

2024年7月16日から第10回太平洋・島サミット(PALM10)が東京で開催される中、日本のNGO4団体で構成されるFair Finance Guide Japan(※1)は、報告書「パプアLNG事業における環境・人権規範の違反と融資責任~撤退する海外銀行と執着する日本の金融機関~」を発表した。本報告書では、太平洋・島サミットの参加国であるパプアニューギニアで計画されているパプアLNG事業が6つの国際規範に違反している事、海外の10金融機関が同事業を支援しない旨を表明している事を明らかにし、日本の金融機関に対して同事業を支援しない旨を表明するよう求めている。

第10回太平洋・島サミットは、太平洋島嶼国と日本のパートナーシップを強化する目的で開催され、これらの国・地域が直面している様々な問題について首脳レベルで意見交換が行われる(※2)。太平洋島嶼国は、気候変動による海面上昇や熱帯暴風雨の激化、珊瑚礁の白化等の壊滅的な影響を受けることとなる(※3)。このような危機感から、太平洋・島サミットに参加するフィジー、ナウル、ニウエ、パラオ、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバルの9ヶ国は、石炭・石油・ガスの新規開発中止及び既存事業からのフェーズアウト等を目的とした「化石燃料不拡散条約」を共同提案している(※4)。日本が太平洋地域で新規ガス開発を進めることは、同地域との協力関係を壊すことになりかねない。

パプアニューギニアでは、南東部ガルフ州におけるガス田の開発及びポートモレスビー付近における液化天然ガス(LNG)生産設備の建設を目的とするパプアLNG事業が計画されている。同事業にはENEOSホールディングス株式会社の子会社であるJX石油開発株式会社も出資している。本報告書の調査の結果、パプアLNG事業は(1)パリ協定1.5度目標に整合していないこと、(2)影響を受ける先住民族の同意が欠如していること、(3)生物多様性への影響に対するオフセットの措置が不十分であること等の問題があり、パリ協定、先住民族の権利に関する国際連合宣言、エクエーター原則、国際金融公社(IFC)パフォーマンススタンダード、OECD多国籍企業行動指針、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインの6つの国際規範に違反していることが明らかになった。

国内外NGOがグローバル規模で金融機関に向けたアドボカシー活動を行ってきたことにより、海外の10金融機関(BNPパリバ銀行、オーストラリア・コモンウェルス銀行、クレディ・ミュチュアル銀行、ソシエテ・ジェネラル銀行、ウエストパック銀行、グループBPCE/ナティクシス銀行、ウニクレディト銀行、クレディ・アグリコル銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行、南太平洋銀行)がパプアLNG事業へ融資しないことを表明している。

しかし、日本の金融機関は不関与の表明を行っておらず、支援の可能性が残されている。パプアニューギニアにおける過去のLNG事業や近接地域であるオーストラリアのLNG事業への関与の実績から、Papua LNG事業を支援すると想定されている日本の金融機関は国際協力銀行(JBIC)、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、信金中央金庫、SBI新生銀行、千葉銀行、日本貿易保険(NEXI)、東京海上、MS&AD、SOMPOなどがあげられる。日本の金融機関もPapua LNGへ支援しないことを表明するべきである。

 

注:
※1:世界15カ国以上で展開するFair Finance Internationalの日本コアリションで、日本では、アジア太平洋資料センター(PARC)、APLA、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)の4団体で構成。
※2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ps_summit/index.html
※3:https://www.usip.org/publications/2023/11/pacific-island-nations-seek-climate-solutions-outside-cop28
※4:https://fossilfueltreaty.org/endorsements/#governments 

 

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝/本川絢子
tanabe@jacses.org / honkawa@jacses.org