ケース調査:アジアでインフォーマル経済を増長させる日本からの投資
2023年2月14日、Fair Finance Guide Japanはケース調査報告書「アジアのインフォーマル経済を増長させるライドシェア~孫正義の無謀な投資がもたらすもの~」を公開した。
同報告書ではウーバー、グラブ、ゴジェックやオラなどアジアで事業展開するライドシェア事業者によって現地でインフォーマル経済が増長されているほか、搾取的労働の実態を明らかにするとともに、そのような労働市場の破壊と脱税行為によって収益性を確保するビジネスモデルが再生産されていることをインドネシア、フィリピン、ベトナム、インドなどの事例から明らかにしている。
その問題産業にかかわる主要企業に共通して投資をしているのが日本のソフトバンク・グループである。ウーバー、グラブ、ゴジェックではいずれも外部株主としては最も議決権株式を保有する立場にあり、総額で100億米ドル以上の出資をしていることが明らかになった。また、インドの主要ライドシェアであるオラは上場していないために公開されている情報が少ないものの、4.6億米ドル以上の出資と役員の席を確保していることは数多くの報道で明らかになっている。ソフトバンク・グループからの投資がなくてはライドシェアはここまでアジアで急伸することはなかったかもしれない。その点において、アジアのインフォーマル経済の増長には深くソフトバンク・グループの関与があったと言える。
しかし、ソフトバンク・グループによるこうしたITベンチャーへの投資を行う部門であるソフトバンク・ビジョン・ファンドは続けて大赤字を出しており、投資は無謀であったと一部では酷評されている。その酷評を得るほどに無謀な投資を可能にしてきたのが金融機関からの2兆円を超える温情融資である。中でもソフトバンク「操業当初からの蜜月関係」にあり、業界筋からは「甘々」と評されるみずほフィナンシャルグループからの一時単独で1兆円を超える融資がソフトバンクを支えてきたことは明らかである。
新しい産業が急伸するときには、そのメリットがもてはやされがちである。しかし、しばしばその背景には社会的に脆弱な立場にある人びとへのしわ寄せがある。問題は今回のような投資環境では現在金融機関が持ち合わせている社会配慮方針では問題を予防することも緩和することもできないことである。今後、金融機関は社会配慮方針をさらに強化させ、新興産業が社会的脆弱層の搾取でもって急伸を遂げていないか十分に検証するとともに、そうした産業への投資への関与についても規制していくべきである。
図1.ソフトバンク・グループからアジアの主要ライドシェアへの出資関係