日本の金融機関は自然環境破壊にどう関与しているか?~海外における5つの開発プロジェクトを例に~

02 10月 2015

環境NGO や研究者が問題を指摘している5 つの開発プロジェクトを対象として調査を実施した。案件名、国名、事業に関与している調査対象企業、発生している環境問題の概要は以下の通り。 

案件名・国名

事業に関与している調査対象企業

発生している環境問題の概要

ケース1:ニュー・サウス・ウェールズ州における森林伐採(オーストラリア)

日本製紙、伊藤忠商事

保護価値の高い森林(オニアオバズク、ススイロメンフクロウ、オトメインコ、オオフクロモモンガ、オオフクロネコのような絶滅危惧種、連邦法や州法で貴重種に指定されているコアラ、野生動物のウォンバットの生息地)の伐採・木材生産・輸入。

ケース2:タスマニアにおける森林伐採(オーストラリア)

三井物産、住友商事

保護価値の高い森林(絶滅危惧種のタスマニアン・デビルをはじめとする固有種を育む希少な高木ユーカリや温帯性雨林の原生林)の伐採・木材生産・輸入。

ケース3:ジュリマグア鉱山開発プロジェクト(エクアドル)

コデルコ

試掘で使用された薬剤や土中の重金属が混入した汚水の流出による人・家畜への健康被害が発生。鉱山開発に伴い4000ヘクタールの原生林(保護価値の高い森林)の伐採が予定されている。

ケース4:ナムニアップ第1水力発電事業(ラオス)

関西電力

ナムニエップ川流域で 7,600ha もの土地と森林が水没し、水質をはじめ生態系の激変によって、絶滅危惧種の Northern white-cheeked gibbon(哺乳類)や希少種の Giant barb(魚類)をはじめ、生物多様性への影響が懸念されている。

ケース5:ライナス社レアアース製錬工場(マレーシア)

ライナス、双日

放射性物質を含む廃棄物を保管する鉱滓ダムの流出対策が不十分なままレアアース精錬工場の操業が開始された。操業開始後1年が経過し、工場周辺でトリウムやウラン等による汚染の発生が示唆される土壌分析結果が出ている。

 

  5つの開発プロジェクトに関与している企業8社に対する三菱UFJフィナンシャルグループ(三菱UFJ)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友)、りそなホールディングス(りそな)、三井住友トラストホールディングス(三井住友トラスト)、日本郵政グループ、農林中央金庫の投融資状況を調査したところ、以下の通りとなった。

単位:億円

 

三菱UFJ

みずほ

三井住友

りそな

三井住友
トラスト

日本郵

農林中央金庫

合計

融資

12,360

14,141

10,196

67

1,402

132

3,105

41,403

証券発行

1,763

1,499

834

0

0

0

0

4,096

株式保有

1,305

1,040

233

0

691

0

1

3,270

債券保有

0

25

0

0

1

0

0

26

 

各金融機関で掲げられた投融資方針とのギャップについては、三菱UFJ、みずほ、三井住友は、保護価値の高い森林(HCVF)伐採への予防措置の奨励、絶滅の恐れのある種(レッドリスト)への悪影響の予防措置の奨励、環境影響評価の実施の奨励を融資方針としているが、これらの方針が適切に実施されていないことが明らかとなった。また、りそなは、環境影響評価の実施の奨励を、三井住友トラストは、購買方針における自然関連基準の策定の奨励をそれぞれ融資方針としているが、方針が適切に実施されていないことが明らかとなった。なお、日本郵政と農林中央金庫は、公開されている情報の中には加点対象となる方針はなく、掲げられた投融資方針とのギャップはなかった

各金融機関は、環境配慮に関する投融資方針の策定・強化、環境配慮確認の実施強化、エンゲージメント・投融資引上げを図るべきである。特に日本郵政と農林中央金庫は自然環境に関する投融資方針を策定・公開するべきである。

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PDFダウンロード:Fair Finance Guide第2回ケース調査報告書日本の金融機関は環境問題にどう関与しているか?~海外における5つの開発プロジェクトを例に~(PDF)