森林ブリーフィングペーパー(2020)

ブリーフィングペーパー「ボルネオ島サラワク州の熱帯林消失~私たちのお金が汚職と森林破壊に?~」を公開しました。


<過剰伐採で減少する熱帯林>

熱帯林は、中南米、アフリカ、東南アジアの諸地域で深刻な破壊にさらされています。しかし、その消失は、日本に暮らす私たちにとっても、「海の向こうの出来事」ではありません。1960年に木材輸入の自由化によって安い外材が流通するようになって以来、木材の国内供給量・自給率の低下した日本は、世界の主要な木材輸入国の一つとなってきました。そして、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど東南アジア諸国から日本に輸入された安価な木材は、現地での熱帯林の伐採と直結してきたのです。
日本の旺盛な木材需要を背景に森林伐採が急速に進んだ地域のひとつが、マレーシア・ボルネオ島のサラワク州です。
豊かな熱帯原生林を抱えていたサラワク州で商業伐採が本格化したのは、1970年代以降です。2013年に出されたある報告書は、サラワク州は「世界でもあまり類を見ないほどの集中的な伐採を経験して」おり、「南米とアフリカを合わせた量よりも多くの熱帯木材を輸出し続けている」と指摘しています 。
このサラワク州の最大の木材輸出先となってきたのが、日本でした。その関係は今日でも続いており、2018年の州統計では、実に輸出額の49%を日本が占めています。そして輸出を目的とした商業伐採によって、ボルネオ島の熱帯林は破壊の一途をたどってきました。


<伐採許可証で私腹を肥やしたタイブ・マハムド>

サラワク州における過剰な伐採・乱開発と木材輸出。これを現地で可能にしてきたのが、タイブ・マハムド(1936-)という人物でした。タイブは、熱帯林を抱えていたサラワク州で木材利権の汚職に手を染めることで、州の最高権力者となった政治家です。30年以上にわたり政権を握り、州の財産である森と土地を、一族とともに私物化してきました。
サラワク州で業者が森林を伐採するためには、州政府の発行する伐採許可証が必要となります。そこで、タイブはその土地で暮らす先住民族の意向や自然環境への影響を無視して、許可証を発行することで、見返りに伐採企業などから賄賂を受け取っていたのです。本来は森林を守るための制度であった許認可制度を悪用して、森林と土地を企業に売り渡し、企業からはその見返りを受け取り、私腹を肥やしてきたのです。
タイブはさまざまな手段を用いて州の熱帯林からお金を得ていましたが、その手口の一端は2007年に輸出先の日本から発覚しました。日本の海運企業12社から成るカルテルが少なくても25億円の「仲介料」をタイブの弟が持つ会社に支払っていることが明らかになったのです。この件はその後、事業を行なうための「必要経費」であったと日本の国税庁が認定しますが、首相の弟に何億円も支払わなければ成り立たない木材輸入というのはいかがなものでしょうか?

<贈収賄と財産隠しを可能にした金融機関>

木材の購入代金とは別にタイブ一族へと企業から支払われる見返り。このようなお金の動きは多くの場合、「タックス・ヘイブン」(tax haven)と呼ばれる国や地域をまたいで行われます。タックス・ヘイブンは「租税回避地」とも訳されますが、税の支払いを逃れるために利用されるだけではありません。むしろ、匿名性の高さによって持ち主を分からなくしたまま資産を運用できる点が、各国の法規制や当局の目を逃れるために利用されているのです。そのため、最近では「守秘法域」(secrecy jurisdiction)という呼び名も提唱されています。

タイブ・マハムドとその一族は、企業からの賄賂をマレーシア国内では受け取らずにタックス・ヘイブンのネットワークを経由して自らのものとすることで、莫大な資産を築き上げたのです。スイスのNGO、ブルーノ・マンサー基金は2012年の報告書で、タイブの資産を150億ドル(約1.6兆円)と見積もっています。
秘密主義の空間としてのタックス・ヘイブンは、単独の場所で成立するものではなく、複雑に組み合わせて利用されることで成り立つものです。そして、口座から口座へお金を動かす手続きをする金融機関の存在があって初めて機能します。すなわち、銀行は、誰がどのタックス・ヘイブンにいくら送金し、そしていくらのお金を受け取ったのかを知り得る立場にあるのです。
タイブが深くかかわるドイツ銀行や、旧スイス銀行として知られるUBSグループは、タイブの一族がタックス・ヘイブンを通したお金のやり取りをしていることに気づきながら一切を黙認してきました。それどころか、積極的にタックス・ヘイブンを紹介して資産隠しに貢献してきた事例も、ブルーノ・マンサー基金の調査によって明らかとされています。

 

<日本のメガバンクの責任>

日本のメガバンクや私たちも無関係ではありません。これまで見てきたような賄賂を伴う取引に融資をしてきたのは日本のメガバンクであり、私たちの預貯金です。
タイブは2014年に辞任に追い込まれますが、今もボルネオでは違法伐採が続いています。国際NGO「グローバルウィットネス」ではマレーシア現地企業5社における違法伐採の事例を確認しているのです。しかも、日本の木材輸入商社大手5社はいずれもそのような企業から木材を買い付けてきたことが明らかになっています。しかもその木材は東京五輪の会場にも使用される予定だった新国立競技場の建設現場でも使われていることがFoE Japanらの調査から判明しています。
さらに木材輸入商社には大手金融機関からの投融資がFair Finance Guide Japanの調査で確認されています。すなわち、今も私たちのお金は違法伐採を買い支えている可能性があり、そうした木材の上に日本の暮らしと社会は造成されているのです。

タックスヘイブンを利用した汚職を防止する取り組みも十分ではありません。

違法伐採や賄賂によって合法化された過剰な伐採を止めよう!

詳しくはブリーフィングペーパー「ボルネオ島サラワク州の熱帯林消失~私たちのお金が汚職と森林破壊に?~」をご参照ください。

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