海外主要銀行の「石炭ダイベストメント方針」 調査レポート

22 4月 2016

2016年4月22日、Fair Finance Guide Japanと株式会社ニューラルは、海外主要銀行の「石炭ダイベストメント方針」調査レポートを共同発表しました。

 今、世界中で気候変動に対する関心がかつてないほどまでに高まっています。2015年12月、パリ。気候変動枠組み条約パリ会議(COP21)に、世界各国の首脳が集い、地球温暖化2℃未満に抑えることで合意、政府が温室効果ガス排出量削減目標を自主的に定め、それに向けた政策を実施していくことをコミットしました。

  パリ会議に集まったのは政府関係者だけではありません。温室効果ガスを実際に排出している主体である企業や、企業に資金提供をしている機関投資家もパリに赴きました。今日、産業界の中では、「気候変動リスク」という言葉が飛び交い、気候変動が事業活動に与える影響、株式市場に与える影響、機関投資家のリターンに与える影響が活発に分析、議論されています。

  とりわけ注目されているのが石炭です。石炭は温室効果ガスや大気汚染物質を多く排出するエネルギー源であり、また石炭の採掘が引き起こす環境破壊にも大きな懸念が叫ばれています。このような石炭の環境懸念は2000年代後半から有力な国際環境NGOによって指摘されるようになりました。彼らは石炭関連の事業者である企業だけでなく、石炭関連事業に資金提供する金融機関も非難の対象に加えていきました。

  この流れはパリ会議の前後にさらに大きくなります。パリ会議で宣言した温室効果ガス排出削減の自主目標達成のため、世界各国の政府は環境規制強化など政策転換の動きが見られます。直接投資の担い手である年金基金や保険会社、また資産運用を担う運用会社などの機関投資家は、このような環境変化を受け、石炭関連事業リスクの評価を開始、海外の機関投資家の中にはすでに石炭関連事業への投資割合を減らしたところもあります。特に、キリスト教会関連年金基金、政府年金基金からは資産運用の使途として石炭を忌避する動きもあり、この動きが直接投資市場に影響を与えていると言えます。

  この波は間接投資の担い手である銀行にも及んでいます。パリ会議の前後に、複数の海外主要銀行が、石炭関連事業からのダイベストメント(投融資撤退)を表明しました。これら銀行は自主的に投融資基準を強化し、石炭関連事業へのサービス提供を制限する動きに出ています。もちろん、規制は銀行の自主的判断で実施されているため、その内容は銀行ごとに大きく異なります。今回、米国Bank of America、Morgan Stanley、Wells Fargo、英国HSBC、フランスBNP Paribasを取り上げ、具体的な規制内容やその経緯を分析しましたが、ダイベストメント行動の動機は様々だと推察できました。直接投資市場では異なり、間接投資市場では預金者などの一次資金提供者が、資産運用の使途をコントロールすることは通常できません。間接投資市場でのダイベストメントに関しては、より銀行自身の方針が色濃く反映されるものとなります。

  日本の主力銀行からはまだ石炭ダイベストメントの発表は出ていません。気候変動が事業活動に与える影響を、日本の銀行がどのように分析、評価しているのかに、社会の関心は高まっています。同時に、資源価格が低下し、日本の商社も石炭事業から大きな損失を出したという報道もあります。気候変動対応に世界全体が取り組む中、政府だけでなく企業や金融機関も同様に、この局面にどう向き合うのかが重く要求されています。

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